昨年度受賞アイデア


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町を繋ぐ、人を絆ぐ

岡山科学技術専門学校 nest

1 アイデアの概要・コンセプト
玉島中央町(玉島港)は、かつては物資の集散と商いにより大変賑わった町であった。
しかし、今では昔の繁栄の面影を残すものの、かつてのような賑わいは失われている。郷愁を誘うノスタルジックな町ではあるが、さほど町の元気を感じることができない。
○第一のバリア 玉島は水(海、川など)による分断の多い町。この課題地も海によって分断されている。
○第二のバリア 前者の分断により、その周辺で生活している人々のつながりの阻害と、多様化するコミュニケーションスタイルによるつながりの希薄さ。こうしたバリアも町のパワーを減退させる要因のひとつではないのだろうかと我々は考えた。そこで、これらを取り除くために、この地に「商い」と「食」をテーマにした建築空間を提案する。

 

2 アイデアの着想点・提案理由・提案の背景
分断された地を繋ぐのであれば橋を架ければよい。しかし、人を絆ぐためには単に通過するための建造物ではなく、その場を人が滞在しコミュニケーションを発生させる場、すなわち【Station】へと昇華させる必要がある。

現地にリサーチに訪れた際にまず私たちが感じたのは、言葉では表すことのできない郷愁を誘うノスタルジックな空間だ。そして、商店街では残念ながらシャッターが降りてしまった店も見られるなか、今でも地域住民や外部からも需要がある元気な店もあった。
玉島にはこのような玉島ブランドとも言える質の高い特産品が多く存在する。
新鮮な地物の魚介類、マスカットやピオーネに代表されるフルーツと新鮮野菜、豊島屋のタテソース、菊池酒造の日本酒など・・・

そこでは建築的空間だけでは表現できない「人の温かさ」を感じた。また、町並みの保存も行われており昔ながらの風景も残っている。これらはこの町の大きな可能性であり、この街に関わらずこれからの私たちが大切にしていくべきものだと考えた。

 

3 提案する具体的な事業内容
「商い」
海の上に蔵の形をした建築を散りばめ、デッキ状の小路(alley)で結び対岸と繋げる。ここは玉島が誇るべき、新鮮な地物の魚介類、マスカットやピオーネに代表されるフルーツと新鮮野菜、豊島屋のタテソース、菊池酒造の日本酒など・・・玉島ブランドとも言える食品や食材を扱う【市】とし、玉島の商いを再構築する場となる。最大の魅力は、現代のシステム化された買い物スタイルではなく、映画「ALWAYS~三丁目の夕日~」さながらの会話と人情が飛び交うノスタルジーな買い物の場。また、水上での買い物のスタイルは非日常的な感覚を抱かせる。


「食」
海面に最も近いレベルに位置するダイニングキッチン。潮位によって見える景色も空間のレベル感覚も変化する非日常的な食事の場。このダイニングキッチンにはシェフは存在しない。利用する人々がシェフであり客である。【市】で購入した食材や食品を中心に、わいわいガヤガヤみんなで作って、みんなで食べて!ファミリーで、友人同士で、合コンで、今流行りの婚活パーティーで、そして食育を通じての人づくりも・・・ここでは玉島の町にあるゆったりとした時間の流れのように、この空間ではスローフードを楽しんでもらいたい。

 

4 アイデアの実施・運営方法、地域との連携方法
玉島の元気なものを集結させ、玉島ブランドを確立させる。
そして玉島ブランドの外に向けての発信とブランディング(構築・管理・拡張)を確固たる戦略のもとに行う。特にブランド拡張に関しては、【市】の初期段階に存在する空き店舗に出店した玉島ブランド新規参入者が成功した場合は、港の外で商いを展開する。例えば商店街に出店し、商店街再生の起点となってもらう。これをサイクルさせていく。・・・そして将来は、玉島の課題地以外の場所にも、このつながる建築が広がっていき、建築が人と人を結びつける町として発展していく一つのモデルプランとなる。

 

5 期待される効果
玉島ブランドを確立させ、外に向け発信することにより集客が見込まれる。また近年のようなシステム化された買い物でなく、人情が飛び交うノスタルジーな買い物の場とそこで調達した特産品ををみんなで調理して食べることにより、地域内外のコミュニケーションが生まれることが期待できる。
またこのプランが同じ問題を抱えた町の一つのモデルプランとなり得る。

 

6 このアイデアにかける思い
今現在の日本では玉島と同じような問題を抱えた町は多く存在する。
そして、東北の震災以降どのような分野でも「人とのつながり」がテーマとなっている傾向が見られる。今日本人はつながろうといている。しかし、このテーマはとても難題であり様々な問題をクリアする必要がある。よく海外からの目線で「それは君たちの心のバリアの問題ではないのか。」と言われる。このような「心のバリアフリー」などの問題に関してはかなりソフトな問題点であり、建築のようなハードな提案では改善は難しい。


しかし、ハードな提案でもソフトな問題を助ける提案は可能だと考える。
今私たちに必要なものは、このように自分たちに出来る限りの力をシェアすることだ。今回の私たちの提案は微力かもしれないが、このような小さな力を少しずつ繋げていき、大きな力にしていくことが、「人のつながり」であり今の日本の課題だと考える。




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